薪割の季節に突入!
最近ちょっと悲しいニュースや不安なニュースが多く報道されていますが、
こんな時だからこそ僕ら薪ストーブ屋ができる事もきっとあるはず。
僕は斧バカだから斧の事と薪割の事で、自粛でストレスたまっているユーザーの皆さんの為に、休日自宅で楽しく薪割をして貰いたいと勝手に思ってしまってます。
でもでも、斧についてなら任せてください!
斧のスペシャリストとして今日は『斧について』を語ります。
僕の斧バカ知識で皆様のストレスが発散され、さらに薪割と斧に興味を持ってくれたら幸いです。
では、どうぞ・・・。
FLAME ON G.T

【斧について】
斧の種類を大きく分けると4つに分類されます。
スプリッティング・アックス・・・・・薪割り斧
キンドリング・アックス・・・・・・・焚き付け用斧
フェリング・アックス・・・・・・・・伐採斧
ブロード・アックス・・・・・・・・・斫り斧
現在流通する実用斧については、ほぼこの4種類に該当するわけですがそれ以外にも使用用途に応じて専用の斧がある事も覚えておくと良いでしょう。

スプリッティングアックス(薪割り斧)
薪割りなど。木材を木目の方向に分割するために使用される。刃は分厚くて重く、くさびに近い形状。西洋式の斧でも、柄は直線の場合が多い。

キンドリングアックス(焚き付け用斧)
焚き付け作りをするための斧。キンドリングの意味には“点火”“焚き付け”という意味があります。

フェリングアックス(伐採斧)
木を伐るなど、木材を木目と垂直に切るためのもの。木の繊維を軽快に切断できるよう、刃は薄く、鋭い。片刃または両刃があり、また重量、形、柄の形状、切断する素材の特性に合わせた切断形状には様々なものがある。フォレストアックスとも呼ばれている。

ブロードアックス(はつり斧)
丸太の側面を削ぎ、角材を作り上げるために使われる。刃の形状はノミ状(片面は平らで、もう片面は斜角がつけられた刃)で、より精密な作業が可能なように作られている。
【斧の素材】
ほとんどの斧身の素材は鋼で出来ています。
他にはセラミック、スチール、アルミ、ステンレスなども稀に存在します。
曲線的な木製の柄が主流で、グラスファイバーや強化ゴム、スチール、強化プラスチックを使用している斧もある。木製の柄に関して最もポピュラーな素材としてヒッコリー、ホワイトアッシュ、アオダモ等を使う事が多く、日本においては最も主流なのが樫で桜や櫟も度々使われています。
これらは堅木の中でも粘りが強いため衝撃が加わった時に伝わる力の吸収性がよく折れにくいという特徴があります。
ちなみにグレンスフォシュはスウェーデン鋼というとても硬い鋼を使っています。
興味のある方は“ロックウェル硬さ”“スウェーデン鋼”で調べてみてください。
【ロックウェル硬さ】

【曖昧な斧の分類】
先にも述べた斧の種類ですが、各メーカーあらゆる形状の斧を独自に開発し販売しているのが現状で、実際大きく分けた4種類の中には当てはまらないものも多数存在します。
呼び名も様々で、キンドリングアックスでもハンドアックスとかハチェットという呼び方をする場合もあります。但し、ハンドアックスとは本来柄のない斧身の部分だけを手になじみやすく加工した斧であり、つまりは石器時代に使われていたような斧の事を指し、柄のついた小型の焚き付け用の斧についてはハチェットと呼ぶ方が正解です。
特にキンドリングアックスの種類は豊富で、その区分をどこで分けるかの取り決めはないため単純に“焚き付け”を作るのに適した斧という括りだけで分けているのが現状です。
またフェリングアックスについても“伐採に適した斧”という表現で区別されています。
ヨーロッパでは木の特徴に合わせ斧を使い分ける習慣があり、その使い分けの患しさからダブルビットと呼ばれる両刃の斧が主流でありました。両刃故に身体を傷つける危険性から現在では使用頻度は少ないのですが、その製法から伝統工芸品としての価値を見出すために北欧地域で昔からある庶民の娯楽としての斧投げ(斧を投げ的に当てその点数を競う)に使われています。
現在もこの斧投げの大会は世界各地でしばしば行われており、チャンスがあれば是非一投して爽快感を味わってみるのも良いかもしれません。
こういった斧投げなどに使用される斧をスローイングアックスといい、他にも古い時代の戦争や戦いなどで用いられた武器としての斧をバトルアックスと呼びトマホークと呼ばれることもしばしばある。しかしトマホークはインディアンが狩猟に使用した斧の名称でどちらかというとスローイングアックスに分類されます。
イメージ的に戦闘用の斧として知られている事が多いのですが、これは映画などの影響から戦いの道具としての認知度の方が高くなったからです。(部族間の戦いで使用された事も確かであるが、斧の種別分けは曖昧である)
他にもバイキングアックスと呼ばれているものもあります。
斧は全世界において広く使われておりその歴史は石器時代に遡るほど人間が使用する道具の内もっとも古いものであります。
【日本における斧】
日本においても斧は古くから使用されておりその形状は基本的に西洋の斧と変わりありません。
その呼び方も様々で、斧(おの)、斧(ヨキ)、鉞(まさかり)、手斧(ちょうな)手斧(ちょんな)
鉈(なた)馬斧(ばきん)鳶(とび)などがあります。

斧(おの)と斧(ヨキ)はその呼び名は違いますが、同じ形状の斧を示します。
なぜ斧をヨキというのかは様々な俗説がありますが、斧(おの)の方言という説と斧琴菊(ヨキ・コト・キク)という験を担いだという説が最も有力な名称の由来となっています。
和斧は西洋の斧に比べ全体的に斧身の厚みがなく重量もありません。
更に刃先は鋭利な形状ではなく斧身を上から見た時の頂点の角度が緩くなっていて
柄の長さは大型の薪割斧で比べると若干西洋斧より長いものが多いです。

これは日本の森林環境によるもので、古くから日本は杉や松が多く、建材としてや燃料として針葉樹を多用する民族であり西洋人の体系より小柄である為、斧自体の重量を軽くし遠心力を利用して軽く割れるようにするためにこうなったとされる。杉や松と言った針葉樹が広葉樹に比べて割りやすいという面からもパワー重視の西洋斧に比べてスッキリとした形状になっています。

鉞については、木を削る斧の名称でフェリング・アックスと似ていますが日本においては地方によって斧全般のことを鉞と総称する地域もあります。
鉞の特徴としては、柄に取り付ける斧頭と斧へりが異様に細くそれに対し刃先が異様に広く作られている。これは斧へりに人差し指があたるように握ったとき、握った手を刃先がガードしてくれる為と細かい作業をするときに握りやすいようにするため、軽量化、美的感覚によるデザインなどがあげられます。
手斧(ちょうな、ちょんな)はハチェットと同じと思いがちですが、実は木の皮を削る道具でありさらには木を削り取る道具の事を言います。
西洋のハチェットと呼ばれているものは日本でいうところの鉈に当てはまり、
実は鉈も立派な斧の仲間だという事はあまり知られていません。
ただ現代においての鉈はその形状から斧と分けられた存在となっており全く別の道具として定着しているため斧は斧、鉈は鉈という解釈は間違いではありません。
余談ですが、和斧には刃先を左に向けてみた時、表に3本裏に4本の線が彫られている。
これは三を四ける(身をよける)という意味合いがあり、作業をする人の安全を祈願する為に彫られているものです。
【薪割りと薪について】
正しい薪割りというのがあるのかどうか。
実はこれに関しては薪割りに正しいも間違いもありません。
薪割り斧を使おうが伐採斧を使おうが薪が割れればそれが薪割りです。
一番気を付けなくてはならないのが薪割りをすることで起こり得る怪我についてです。
重たくて鋭利な刃をもった道具を振りかぶって丸太に叩き込むわけですから当然危険は付きまといます。
こういった危険を回避するには自らの危険予測を怠ってはいけない事が重要です。
それに伴い、専用外の斧を使う事で生じるリスクがある事も認識しておかなければなりません。

フェリングアックスの様に斧身の薄い刃で丸太を割ろうとしてもその刃の鋭利さゆえに割れるどころか突き刺さるだけ突き刺さって斧が抜けないなんてことがあります。
また、伐採するときにスプリッティング・アックスを使用してもその重みから数回振っただけで体は悲鳴を上げるし木は削れてくれません。
斧にはたくさんの種類がありますが、1本1本全てそれ専用の特徴があり薪づくりにおいても多くの種類を使い分けることによってより効率よくより安全に作業ができることを知っておくと良いかもしれません。
ただ薪割りにもコツや技があることも確かであります。
よく年輪に入った割れに合わせて斧を打ち込むと割れやすいと言う人もいるがこれは間違いであります。
割れは必ずしも木筋の通った箇所に出来るものではないので木繊維がねじれ斧がそれを切断しなければ分離しないなどという状況もあるからです。
実際割りやすい割り方とそうでない割り方の違いは確信のもてるものはないのですが
斧を入れる木口はより水分の残っている方が良い等の事から
柔らかい部分を狙って打ち込むのが良いとされています。
見た目での判断では難しいのですが年輪を見て割れ筋が少ない側を打ち込んだ方が実は割れやすい事もあります。